休眠担保権

先日、相続登記のご依頼があり、登記事項の確認をしていたら、明治時代に設定されて抹消されていない抵当権が残っていることがわかりました。
いわゆる「休眠担保権」というやつですね。

ご依頼いただいた方に確認すると、この機会にすべてきれいにしたいとのことでしたので、抹消手続きをするため調査を開始しました。

その前に、実際に抹消する休眠担保権ごとに抹消手続きとして利用できる方法は異なります。
よってそれぞれの手続きの概要を理解する必要があります。
ここでは、担保権者が個人の場合の手続きを説明しますね。

(1)担保権者(抵当権者)との共同申請
いくら古い抵当権でも、登記上の抵当権者が存命、あるいは死亡していても相続人がいれば、その方たちと協力して抹消登記を申請を行います。(通常の抵当権抹消登記と同じですね)

(2)供託利用の特例を利用した抹消申請(不動産登記法第70条第3項後段)
休眠担保権の抹消方法として代表的な手続きです。担保権者が行方不明で、かつ、債権の弁済期から20年以上が経過している等の要件を満たしているときは、債権額・利息・遅延損害金の合計額を供託すれば、登記権利者(所有権者など)が単独で抹消登記が実行できます。

(3)除権決定による抹消申請(不動産登記法第70条第1項・2項)
担保権者が行方不明の場合、裁判所に公示催告の申立てをし、除権決定を受けます。それをもとに登記権利者が単独で抹消登記ができます。

(4)弁済証書等による抹消(不動産登記法第70条第3項前段)
担保権者が行方不明であっても、債権証書が残っていたり、すべて弁済したことが証明できる書面があれば、登記権利者が単独で抹消登記ができます。

以上が代表的な休眠担保権の抹消登記手続きです。

さて、今回の場合は、明治時代の抵当権ということもあり、(2)の方法で抹消することを前提に調査を開始しました。

1.閉鎖登記簿の取得
現在の登記事項証明書では把握できないことも多いので、閉鎖登記簿謄本を取得します。
例えば、債権の弁済期や、利息、損害金の設定の有無、また、担保権設定時の不動産所有者などが、閉鎖登記簿により判明します。

しかし!!この閉鎖登記簿がくせものです。
写真のように毛筆で手書き。文字は旧字体でさらに草書体(崩し字)ときているものですから、読むのに一苦労です。
今回はこういうのに慣れている法務局の方に手伝っていただき読み解きました。

2.登記義務者(抵当権者)の所在確認(所在不明の調査)
まずは、登記事項証明書記載の住所に住民票があるか、さらにその地に戸籍があるかを調査します。
そこに住所も戸籍もない場合、その証明として、不在住証明、不在籍証明を役所に発行してもらいます。ここまできて所在不明と判断します。

3.所在不明を証する情報
抹消登記申請には、所在不明を証する情報を添付する必要があります。
この所在不明を証する情報とは、上記の不在住証明、不在籍証明ではダメという判断のようです。
あくまで、データ(記録)上、そこにはいたことがないと証明できるだけで、実際そこに住んだことがあるかどうかを証明するものではないからでしょうか。
そのため、実務上では、「登記義務者の登記簿上の住所に宛てた被担保債権の受領催告書が不到達であったことを証する書面」が利用されています。
この「被担保債権の受領催告書」とは、今までの借金を利息、損害金含めて支払うので受け取ってくださいと催促する書面です。これを送って、相手が所在不明だと差出人に戻ってきます。この返送されたものが、所在不明を証する情報となるわけです。(写真参照)

さらにここで注意が必要なのが、返送理由です。
「宛て所に尋ね当たらず」「宛名不完全」はOKですが、
「受取人不在」「受取拒否」などはだめですね。
理由はおわかりのことと思います。

4.債権・利息・損害金の供託及び抵当権抹消登記
ここまでくれば、あとは、供託をして、供託が無事受け付けられれば、その後抹消登記と進みます。

簡単に書きましたが、供託金額の計算も結構大変なのですが、書き出すと大変なのでここの詳細は省略しますね。
ただ言えることは、明治時代の金額を今の貨幣価値に直して供託するのではないということです。そんなことをしたら、相当な額の金額を供託しないと抵当権抹消ができなくなってしまいます。
債権額100円だったら、今の金額でも100円です。
あとは、利息と損害金(これの計算が結構大変!)を加えて供託すればOKなのです。

いかがでしたか?

もし、自分が所有する不動産に身に覚えのない古い担保権が残ったままになっているのを発見したら、ぜひ司法書士にご相談くださいね。

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