休眠用益権(休眠地上権)

休眠用益権(休眠地上権)という言葉があるのかどうかはわかりませんが、先日、あるお客様の相続登記のご依頼があった土地について、大正時代の地上権が残っていることがわかりました。

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お客様に話を聞いてみると、そんな地上権の存在は知らないし、地代ももちろんもらっていないとのことです。
お客様がその山林を取得したときにはもう事実上地上権は消滅していたと考えられます。

その土地は山林(保安林)で、次のような登記が残っています。
1.乙区1番に大正12年地上権設定
目的:電線用鉄塔所有
範囲:土地一部分16歩
存続期間:山陽水力電気株式会社存立期間
地代:16歩につき1年50銭
地権者:山陽水力電気株式会社
2.乙区1番付記1号に地上権移転
昭和13年に「会社合併」を原因として「日本電力株式会社」に移転
3.乙区1番付記2号に地上権移転
昭和16年に「出資」を原因として「日本発送電株式会社」に移転

つまり最後の地上権者は「日本発送電株式会社」です。
さて、この登記を抹消するにはどうすればいいのか、悩みました。
いなか(すみません)の農地や山林の登記を多くやっていそうな知人の司法書士に聞いてみても経験がないとのこと。

とにかくこの「日本発送電株式会社」についてまずは調べました。
1.オンラインで登記事項証明書を取得してみる→当然取得できず
2.管轄登記所に、閉鎖登記簿を依頼する→保存期間20年経過のため取得できず
3.ネットで「日本発送電株式会社」について調べてみる。
戦前の電気事業者であり、戦後の国策により、昭和26年解散し、現在の9電力会社に再編されたらしい。

以上情報から管轄法務局にも聞いてみました。
「会社存続してないわけだから存続期間満了で単独申請できないでしょうか?」
「権利消滅の定めが登記されてないから存続期間満了では単独申請は無理ですね」
「ではどうすればいいでしょうか」
「やったことがないしねー、だから今までほっとかれたのかなー。方法は先生で考えてよ」でした。

先輩にもいろいろ聞いてみました。
案としては、
①被告に特別代理人を選任してもらって訴訟をする
②公示催告による除権決定を利用する
というものです。どちらも時間とお金がかかりそうです。

そんななか、「とりあえず関電に聞いてみたら。そんなケース他にもあるだろうから問い合わせも受けてるんじゃない」
なるほど、そうですよね。戦後の編成でその土地の管轄は関西電力です。
ダメもとで関電に聞いてみることにしました。

代表に電話して、法務部に回してほしいというと、当然ながら用件を聞かれます。
概要をお話しし、法務部に回してもらいました。
電話を受けた人の感触は「何のこと???」みたいな感じです。とりあえず文書で照会してほしいと言われました。
やっぱり空振りかなーと思いながら、でもやってみないとわからないということで関西電力に以下の内容の文書を送付しました。
・「日本発送電株式会社」の権利関係を承継しているか
・承継しているとしたら地上権抹消に協力してもらえるか

するとしばらくして関西電力のさらに管轄地域の電力部より入電があり、「日本発送電株式会社」の権利関係を承継しており地上権の抹消もできるとの回答を得ました。
やりました!!

ただし、地上権抹消には、まず、関西電力に地上権の移転登記をし、抹消手続きに移る必要があり、そのためには「先方所定の依頼書」「位置図(付近図)」「全部事項証明書」の提出が必要とのこと。
また、旧電気事業者からの承継物件で、関西電力に権利移転登記がなされていないものに関しては、嘱託登記(経済産業大臣宛届出を行い登記の嘱託を依頼)により、関西電力㈱名義にしてからの処理となるとのこと。
そして、経済産業大臣への届出は、資源エネルギー庁との申し合わせで、原則年1回としているとのこと。(毎年夏頃に物件を集約し抹消登記に向け手続きを行うが最大1年程度の期間を要する)

つまり今から依頼をしても地上権が抹消されるのは来年(2019年)の11月~12月ごろになるということらしいです。

地上権抹消登記完了は1年も先です。でも解決方法がわかり一安心です。

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