家族信託:受益者の死亡で信託終了させない受益者連続信託

家族信託の信託契約書を作成するうえで、考えることの一つに「信託の終了事由」があります。
家族信託ですので、ほとんどが自益信託つまり委託者イコール受益者のパターンだと思います。つまり親御さんの財産を、親御さんのためにお子様が管理していくとういうケースですね。
(例:委託者兼受益者:父、受託者:息子)

そういう趣旨からすると、親が亡くなったら、信託の目的が終了するという理由で、信託契約も終了させるという契約書が一番多いのではないでしょうか。

でもちょっと待ってください!何でもかんでもそれでいいのでしょうか?
今日は、もう少しよく考えたほうがいいのではというお話をします。

まず、信託財産が「自宅不動産」と「現金」という一番多いパターンだったとします。
そして、委託者兼受益者:父、受託者:息子、残余財産帰属者:母というケースを考えます。

父が死亡します。

信託契約は終了します。

信託財産は、契約上で定めた残余財産帰属者である母に移ります。

よって、
①現金は、信託口口座から母の口座に移します。
②不動産に関しては、母に所有権移転登記をし、同時に信託登記の抹消をします。

この時(信託終了時)、もし、母がすでに認知症になっていたら・・・
母に判断能力がないわけですから、その後不動産の処分はできず凍結されてしまいます。口座もしかりですね。

それでは、受託者であった息子が残余財産の帰属者だったとします。
その時(信託終了時)に、母に成年後見人がついていたら遺留分減殺請求をされる可能性があります。そしてその結果、不動産は、母と息子の共有状態になり、やはり不動産の処分は難しくなります

そういったリスクを避けるために、当初委託者兼受益者が死亡しても信託を終了させない方法があります。

信託の終了事由を、「受益者と受託者の合意」としておき、当初受益者が亡くなった場合に、第二受益者を設定しておくという方法です。
第二受益者を母にしておけば、もし、その時点で母が認知症になっていたとしても、母のために信託財産の管理を続けていけばいいわけですし、もし必要なら不動産を売却してしまってから信託を終了させることもできます。
(もちろんこの場合、受益者の母に判断能力がありませんので、受益者代理人の設定をしておくか、信託終了事由に、「信託監督人と受託者の合意」などを入れたおくなどの手当ては必要となります)

このように当初受益者死亡により信託を終了させず、第二、第三と受益者が続いていく信託契約を「受益者連続信託」と言います。
こうしておけば、不動産などの資産凍結というリスクは避けられます。

もちろん、ここまで考慮しなくても大丈夫なケースも多いと思いますが、信託終了事由については十分な考慮が必要ということですね。

くわしくは専門家へご相談くださいね。

****************
相続・遺産整理・遺産分割・遺言・家族信託・成年後見のご相談は当事務所へ!!
お気軽にお電話ください。
事務所名:あすなろ司法書士事務所
住所:神戸市灘区深田町1丁目3番11号
電話番号:078-862-9700
アクセス:JR六甲道より東に歩いて徒歩4分
****************

Follow me!